この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。

各地の建物が独自の気候をつくるようになったことを受け、伝統品種の種子を国どうしで交換する取り組みが今月、極地の港で行われました。

国際種子交換会議によりますと、参加した地域は62、交換された品種はおよそ1200種にのぼったということです。

建物の外皮が屋上や施設内の気候を作る仕組みが広がったことで、作物は土地本来の気候ではなく、建物ごとに設定された気候の中で育てられるようになっています。

その結果、本来は地域の気候に合わせて選ばれてきた品種が、実際の外の気候にさらされる機会を失いつつあるということです。

育てる場所はあっても、鍛える場所がなくなっていました。

会議は、こうした品種を定期的に外の気候にさらし、遺伝的な多様性を保つため、極地の中立港での交換を続けています。

種子は氷点下18度で保管され、輸送には平均でおよそ46日かかるということです。

港が極地に選ばれているのは、政治的に中立であることに加え、低温での保管に向いているためです。

一方で、輸送の途中で発芽してしまう品種があるなど、想定外の課題も報告されています。

会議の担当者は、こう話しています。

「建物の中で快適に育つ品種ほど、外の気候に戻したときに弱いことが分かってきました。守るための仕組みが、守りたいものを弱くしていたのかもしれません」

参加地域の担当者からは、輸送日数を減らす新たな航路の検討を求める声も出ています。

現地で受け入れ作業にあたった職員は、こう話していました。

「箱を開けるまで、どの品種が本当に育つのか誰にも分かりません。100年前の農家も、似た気持ちだったのではないでしょうか」