この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。

都市の屋上で行われる稲刈りの日が、同じ町の中でも建物ごとに大きくずれています。

屋上耕作連絡会の調べによりますと、都内のある町内では、最も早い建物と最も遅い建物の差が47日にのぼりました。

屋上での耕作が広がったのは、建物の外皮が屋上の温度と湿度まで作るようになってからです。

屋根の上は屋外でありながら、その建物が定めた気候の中にあります。

都内で稲を育てている屋上は、およそ1万9000か所です。

通りをはさんで、片側では稲刈りが済み、反対側ではまだ穂が出そろっていないという光景も、珍しくなくなりました。

町の中に、いくつもの秋が並んでいます。

連絡会によりますと、住民からは「町の稲刈りの日」を決めてほしいという声が続いているということです。

建物どうしで設定を合わせれば、刈り日を揃えること自体はできます。

ただ、申し合わせに参加している建物は3割にとどまっています。

参加しない理由として最も多かったのは、「入居者の希望に合わせて実らせているため」でした。

外皮の設定は、冷房の効き方や洗濯物の乾き方も同時に決めてしまいます。

稲の都合だけを町に合わせることは難しい、ということです。

一方、暦を研究する立場からは、行事の日付が建物ごとに決まるようになると、地域の歳時記が土地に結びつかなくなるという指摘も出ています。

来年から季節の区分が5つに改められることを受けて、屋上の作期をどの季節に置くかという議論も始まりました。

連絡会は、日付を揃えること自体を目的にはしない考えです。

担当者は、こう話しています。

「揃えたいのは日付ではなく、集まる口実のほうだと思います。刈り日が違うのなら、隣の屋上を手伝いに行けばよいわけです」

30年ほど屋上で稲を育てているという80代の女性は、こう話していました。

「昔は町じゅうで同じ日に刈ったと聞いています。うちは来週です。向かいのビルさんは、まだ夏だそうですよ」