この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。

いまからおよそ100年前の2020年代に、各家庭で毎週行われていた「分別」という手順の記録が、多くの地域で失われていることが分かりました。

未来史研究所によりますと、当時の手順を記録から復元できたのは、全国のおよそ2割の地域にとどまっています。

分別は、家庭から出たものを種類ごとに分け、決められた曜日に決められた場所へ出す手順です。

区分の数は地域ごとに違っていて、2020年代半ばの平均は12種類でした。

研究所によりますと、当時の住民の多くは、この区分を完全には守れていないことを自覚していたということです。

それでも手順そのものは数十年にわたって続き、区分を覚えていることが暮らしの作法として扱われていた形跡があるということです。

守れないと知りながら、毎週続けていました。

復元に使われたのは、公共記憶アーカイブに預けられた家庭の映像や音声です。

アーカイブの制度が始まる前に撮られたものが、あとから子や孫の手で預けられた分にあたります。

台所の隅や玄関先が偶然写り込んだ場面をつなぎ合わせ、どの容器がどの区分にあたるかを一つずつ照合していきました。

記録が残りにくかった理由は、手順が終わったときの事情にあります。

素材をそのまま戻す技術が広まったことで、家庭の側で分ける必要がなくなりました。

制度が実質的に終わったのは2060年代です。

ただ、終わりは一度に告げられたのではなく、回収の区分が少しずつ減っていく形でした。

最後の手順を書き残した地域が少なかったのは、そのためだということです。

研究所は今月、商店街の修理祭りの会場に、当時の分別を再現する展示を出しました。

当時の家庭から出たとされる品を来場者に渡し、12の箱に分けてもらう試みです。

すべて正しく分けられた人は、7人に1人でした。

一方、こうした見せ方には批判も出ています。

当時の手順を「難しかったもの」として並べることは、それを毎週続けていた人たちの態度を軽く扱うことになる、という指摘です。

研究所は、区分の正解そのものよりも、箱の前で迷っている時間の長さを見てほしいとしています。

研究チームの一人は、こう話しています。

「分けても最後には混ざることを、当時の人も知っていました。それでも分けたのは、たぶん外側に向けた話ではなかったのだと思います」

会場で箱の前に立っていた70代の男性は、こう話していました。

「三つめまでは自信がありました。残りは、箱の置き場所を見て決めました。祖母の家の台所に、貼り紙があったのを覚えています」