この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。
働く場所を自由に選べるようになって久しい時代に、あえて職場へ通う「通勤」を選ぶ人が増えています。
移動生活研究会によりますと、通勤定期券の販売数はこの5年でおよそ1.7倍になりました。
増えているのは20代から30代で、新たに定期券を買った人のうち54%をこの世代が占めています。
一方で、勤め先から通勤を求められている人は全体の8.6%にとどまり、多くは自分の意思で通っているとみられます。
通勤は、もう義務ではありません。
研究会が理由を尋ねたところ、最も多かった回答は「働いている実感が、家では長続きしないから」でした。
次いで多かったのが、「誰かと同じ時間に移動すること自体が、気持ちの区切りになるから」です。
鉄道各社は、長く続いた利用者減少に合わせて本数を減らしてきました。
そこへ通勤を選ぶ人が戻ってきたため、朝の混雑が以前の水準に近づきつつあります。
平均の運行本数は、この10年でおよそ3割減ったままです。
会社側の対応は分かれています。出社を促す企業がある一方、通勤の増加を歓迎しない企業もあります。
在宅勤務向けの設備投資を終えたばかりの企業からは、「今さら座席を増やす予算はない」という声も出ています。
研究会の担当者は、この現象をこう見ています。
「通う理由がなくなったことで、通う人だけが残りました。義務としての通勤と、選ばれた通勤は、同じ電車でも中身が違います」
去年、在宅勤務が認められている職場からあえて週4日通っているという20代の女性は、こう話していました。
「家で仕事をすると、仕事が一日じゅう終わらない気がするんです。電車を降りた瞬間に、今日はここまで、と決められるのが好きです」



