この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。

建物ごとに気候が異なり、来年から季節の区分が5つに増えることを受け、住民どうしで衣類を融通し合う「共同衣装棚」が広がっています。

生活季節調整センターによりますと、都内での設置数はおよそ340か所にのぼるということです。

働く建物と暮らす建物とで、いまの季節がずれていることが珍しくなくなり、両方に合う衣類をそろえておく負担が指摘されていました。

共同衣装棚は、いま自分がいる建物の季節に合う服を借り、不要になれば棚に戻す仕組みです。

年会費は45生活点で、借りること自体に料金はかかりません。

季節は5つに増えたのに、持てる服の数は増えませんでした。

センターによりますと、年間の貸し出しはおよそ58万回にのぼり、利用を始めた住民が持つ衣類の枚数は、平均でおよそ4割減ったということです。

利用の広がりはこの3年でおよそ2倍になっています。

とくに棚が混み合うのは、建物の外皮の設定が一斉に解けて、町がしばらく外の気候に戻る「膜落ち」の日だといいます。

外の気候に合う服を持っている住民がほとんどいないためで、棚の前に列ができることもあります。

一方で、借りた服のサイズや好みが合わず、結局は自分の服に戻る人も一定数います。

センターの担当者は、こう話しています。

「借りた服がその日の気分に合わないという相談も多く、単に数をそろえれば済む話ではないと感じています」

宵原西団地の棚を使っている住民の一人は、こう話していました。

「行き先の建物によって上着を借りるか迷うのが日課になりました。でも、クローゼットが増えないのは助かっています」