この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。
国際会話翻訳基準機構は、ほかの言語から借りて100年以上使われてきた言葉を「定着語」として登録する制度の、1年間の状況を発表しました。
登録された言葉は、自動通訳が原語の意味に直して訳すことがなくなります。
自動通訳は、借りた言葉に出会うと、貸した側の言語での意味を優先して訳す設定が標準です。
たとえば、ある言語で「集まり」を指す借りた言葉が、貸した側では「立ち話」の意味で使われている場合、通訳は話し手の言葉を「立ち話」に直して相手へ伝えてしまいます。
機構が昨年度に受けた、こうした訂正による行き違いの相談は、およそ1万8000件でした。
外国語を学ぶ人が減ったいま、借りた言葉は、多くの人にとって外の言葉に触れる数少ない手がかりでもあります。
100年使った言葉を、機械は毎回、借り物だと言い直します。
機構によりますと、定着語に認められるのは、貸した側と借りた側で意味が食い違ったまま、100年以上使われてきたことを辞書の版や記録で示せた言葉だけです。
受け付けを始めて1年で、申請は3100語に上りましたが、認められたのはおよそ4割にとどまりました。
認められなかった言葉の多くは、100年のあいだに意味が一度途切れていたか、近年になって別の意味が加わっていたということです。
一方で、貸した側の言語を話す人からは、意味が離れていくことを公に認めてしまうとして、慎重な声も出ています。
機構の担当者は、こう話しています。
「直してもらって助かる場面は、これからもあります。ただ、100年使ってきた言葉を毎回間違いと言われるのは、使う側には重いことです」
登録を申請した商店街の組合の男性は、こう話していました。
「祖母の代から店先で使ってきた言葉を、通訳が毎回ほかの言葉に直します。訂正されるたびに、祖母のほうが間違っていたと言われているようで」



