この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。

国をまたいで暮らす家族が、互いの家庭記録を閲覧し合えるようにする国際協定の運用が、今月から始まりました。

国際家族記録閲覧機構によりますと、参加しているのは14か国で、登録された家族は2万3000世帯にのぼるということです。

家庭の記録を市民が預ける制度は、公共記憶アーカイブがおよそ90年前に始めて以来、それぞれの国の中で育ってきました。

そのぶん様式が国ごとに固まり、国境を越えた家族が互いの記録を見ることはできませんでした。

同じ祖父の声を、片方の国でしか聴けませんでした。

機構によりますと、閲覧の申請から許可までは平均でおよそ21日かかり、記録の言語は自動翻訳で9言語に対応しているということです。

一方で、直系の子孫であることを示す書類が国によって形式が異なり、申請の半数近くが差し戻しになっているという課題も報告されています。

本人が「見ない」と決めた記録の扱いも、国によって違います。

亡くなった時点で子孫に開く国と、本人が閉じた範囲をそのまま引き継ぐ国があり、機構は当面それぞれの国の定めに従うとしています。

このため、同じ家族の記録でありながら、片方の国では聴けて、もう片方では聴けないという状態が残ります。

機構の担当者は、こう話しています。

「声や映像そのものより、それが誰のものかを証明する書類のほうに時間がかかっています」

先月、国境をまたいで暮らす祖父母の記録を初めて聴いたという利用者は、こう話していました。

「言葉は分かりませんでしたが、笑い方だけで祖父だと分かりました」