この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。
素材をそのまま戻す技術が2060年代に広まり、ものを「直す」より「戻す」ことが当たり前になったことで、修理の技能を持つ人が減っています。
百年家電修理連盟によりますと、資格を持つ修理士は全国でおよそ3400人にとどまり、平均年齢はおよそ58歳ということです。
材料をいったん戻してつくり直すほうが早く安く済むため、壊れたものをその場で直すという発想自体が薄れてきているといいます。
一方で、思い出のある品や旧型の道具を直したいという依頼は、この5年でおよそ1.8倍に増えました。
戻す技術はあっても、直す人が足りませんでした。
出張の基本料は72生活点(円換算でおよそ5800円)からで、値段そのものに不満は出ていません。
問題は待ち時間で、宵原本通り商店街の受付では、順番が回るまでおよそ3か月かかっています。
壊れたまま台所の隅に置かれている家電がある家は、珍しくないということです。
連盟は、各地の修理祭りに合わせて開く「地域修理カフェ」を、若手の養成の場として位置づけています。
カフェは現在、全国でおよそ210か所開かれており、参加者はベテランの修理士から直接手順を教わることができます。
若い世代に技能が広がりにくい理由について、連盟内では、戻す技術があるのに直す意味が伝わりにくいという指摘も出ています。
連盟のベテラン修理士は、こう話しています。
「直す値打ちがあるかどうかは、持ち主がその品と過ごした時間で決まります。そこだけは、こちらでは測れません」
カフェに通い始めた20代の参加者は、こう話していました。
「最初はもったいないという理由でしたが、直った瞬間の顔を見るのが楽しくて続けています」



