この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。

水深200メートルを超える深海居住区が増えるなか、居住区内の明るさをどう保つかを巡る国際基準づくりが最終調整に入っています。

深海居住基準会議によりますと、現在稼働する深海居住区は世界で58か所、居住者はあわせておよそ9400人にのぼるということです。

案は3つあり、地上の昼夜と同じ明るさの変化を人工的に再現する案、深海特有の薄明かりを基準とする案、居住区ごとに自由に設定する案で意見がまとまっていません。

深さは決まっても、明るさは決まりませんでした。

会議が難航している理由は、地上育ちの入居者と深海生まれの世代とで、心地よいと感じる明るさの基準がすでに分かれ始めていることにあります。

同じ問題は月の側でも起きています。

月面の6つの都市はどこも居住環の中を20度から22度に保っていますが、明るさは拠点ごとにばらばらです。

地球が正面に見える街は終日明るく、盆地の街は終日暗いままで、そのどちらで育ったかによって、標準という言葉の指す先が変わります。

会議の担当者は、こう話しています。

「地上の明るさを再現するほど、深海に住む意味が薄れるという意見も根強くあります」

深海居住区で生まれ育った20代の住民は、こう話していました。

「地上の明るさは、まぶしすぎて落ち着きません」