この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。

電子化がほぼ行き渡ったことで、紙のまま現存する本が希少になり、現存が1冊だけと確認された作品を国どうしで貸し借りする巡回制度が始まりました。

国際希少書物巡回機構によりますと、現存確認が1冊のみの作品は世界でおよそ640点、参加国は27か国にのぼるということです。

1冊が1つの国にとどまる期間はおよそ40日で、その後は次の国へ順に送られます。

最後の1冊は、どこの国のものでもなくなりました。

輸送には専用の緩衝ケースと湿度管理が必要で、機構は輸送中の本の位置を常に公開しています。

受け入れ側では、保存の研修を受けた司書が到着から返送までを担当します。

紙は開くたびに減るため、どこまで人に見せるかは、その1冊ごとに人が決めることになっています。

同じ作品が電子でいつでも読めるにもかかわらず、巡回のたびに順番待ちができるといいます。

機構の担当者は、こう話しています。

「読むための貸し出しというより、存在を確かめるための巡回に近くなっています」

巡回展示で本を見たという来場者は、こう話していました。

「紙をめくる音を聞くために並んだのは、初めての経験でした」