この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。
紙の本が希少になったことで、図書館司書の仕事は「貸す」ことより「保存する」ことが中心になりました。
全国書物保存連盟によりますと、資格を持つ司書はこの10年でおよそ3割減った一方、保存の専門研修を新たに受けた司書はおよそ1200人にのぼるということです。
本を貸す仕事が、本を守る仕事に変わりました。
貸し出しの多くは電子版に置き換わり、紙の本は温度と湿度を管理した書庫で扱われるため、閲覧には事前の予約が必要になっています。
どの本をどこまで開いてよいかを決める判断は、いまも機械に任せていません。
痛み方は1冊ずつ違い、同じ型の本でも扱いを変える必要があるためです。
図書館は本のほかに、音風景保存会から移された音筒も預かっています。
「昔の雨音」「商店街の呼び声」といった名前で貸し出されており、司書は紙と音の両方の保存を受け持つ形になりました。
連盟の担当者は、こう話しています。
「利用者と本の間に、以前より多くの手順が必要になりました」
保存研修を受けたばかりの司書は、こう話していました。
「本を貸すより、本の呼吸を確かめる時間のほうが長くなりました」



