この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。
見て学ぶことでしか伝わらないとされてきた職人の技を、AIが観察だけで習得できるようになったことで、「見て覚える」という伝承の過程そのものを権利として登録する国際制度ができました。
伝統技能継承登録機構によりますと、制度が始まって3年で、登録された技能は世界で970件、登録した職人は610人にのぼるということです。
技そのものより、見て覚えた過程が守られることになりました。
登録すると、その技を観察して習得する行為には職人本人の許可が必要になり、無断の観察による習得は使用を制限されます。
制度に難色を示す声もあり、技を独占せず広めることこそ伝統だという立場の職人も少なくありません。
登録の第1号となった柴惣次郎さんは、宵原本通り商店街の修理祭りに毎回顔を出しています。
「見て覚えました」という言葉が、いつのまにか黙って真似をしたという意味で使われるようになったことについて、こう話しています。
「うちの孫も同じ使い方をします。悪い意味に転んだのは、たぶん制度ができたからでしょう」
機構の担当者は、こう話しています。
「習得そのものは止められません。守っているのは、誰から学んだかという道筋のほうです」
柴さんは、続けてこう話していました。
「弟子を取らなくても、技の出どころが自分だと残るようになりました」



