この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。

地球と月を結ぶ貨物の引き渡しで、受け渡しの時刻を記録する「立会人」を双方の拠点から1人ずつ、計2人置く運用が広がっています。

国際時刻調整会議によりますと、この体制が主要な拠点に広がったのは今年に入ってからだということです。

貨物は、同じ質量の荷物を同時に交換する転送機でやり取りされており、引き渡しの記録には正確な時刻が欠かせません。

ところが月面12拠点は、それぞれ設立元にあたる地球上の地域の時刻をそのまま持ち込んで運用しており、どちらの時刻を記録の基準にするかで食い違いが起きていました。

貨物交換室を備えるのは12拠点のうち8拠点で、1日の引き渡しはあわせておよそ140件にのぼります。

このうち、時刻の記録をめぐって立会人どうしの確認が必要になった件数は、全体のおよそ15%だったということです。

立会人を2人体制にしたことで、1件あたりの所要時間は平均で9分延びました。

晩ごはんの荷を待つ月面の家族からは、到着が遅れるとの声も出ているということです。

月の0時がどこかは、まだ誰も決めていません。

国際時刻調整会議は、2127年に予定される月の標準時の運用開始までは、2人体制を続ける方針を示しています。

立会人を5年務めているという作業員はこう話しています。

「自分の時計が正しいと言いたいわけじゃない。先に押したほうが勝ちみたいな空気にだけは、したくないんです」