この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。

沿岸水利調整会議は、霧から採った水の出どころを後から特定する観測実験を、沿岸の採水設備のうち120棟を対象に8か月間行いました。

同会議によりますと、海上の観測点を136か所に増やして霧の動きを追ったものの、出どころを特定できたのは全体のおよそ4割にとどまったということです。

試験にかかった費用はおよそ1億8000万円で、対象とした120棟が1年間に採る水の価値を、すでに上回っています。

観測がもっとも難しかったのは、霧の濃い残暑期でした。風向きが数時間おきに変わり、同じ採水設備でも日によって追跡できた霧の割合が大きくぶれたということです。

実験を担当した研究員はこう話しています。

「霧は風に押されて何十キロも動きます。板の手前で採ったからといって、その板の前で生まれたとはかぎらないんです」

採った水の帰属を定める国際的な取り決めでは、出どころで分ける案が有力とされてきましたが、今回の結果を受けて実現性に疑問が出ています。運用開始は2128年を目標としたままです。

分からなかった、という結論だけが先に出ました。

採水の板を持つ集合住宅の管理組合はこう話しています。

「出どころが決まらないなら、せめて採った量だけでも公平に数えてほしいです」