この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。
国際軌道旅客運航会議は、軌道フェリーの出発を知らせる合図が国ごとに異なる問題を受け、共通の予告をつくる調整に入ったと発表しました。
軌道フェリーは出発の時刻を1点で決めず、軌道の位置が合う18分間の「窓」のなかで、準備が整い次第出る方式です。
このため、窓が開いてから実際に出るまでの時刻は直前までわからず、見送りの家族は展望室で、手を振る瞬間を待ち続けることになります。
出発の18分間は、見送る人にとっていちばん長い時間です。
会議によりますと、出発の合図は鐘の音で知らせる国、床の明かりで知らせる国、乗客の端末を震わせて知らせる国などに分かれ、31か国のターミナルで同じ方式の組み合わせは一つもないということです。
国をまたいで乗り継ぐ家族のなかには、前の国で覚えた合図を待ち続け、次の国の合図に気づかないまま出発を迎える人もいます。
会議が昨年度に集めた相談はおよそ1200件で、このうち見送りに間に合わなかったという訴えが4割を占めました。
一方で、合図を一つにそろえることには慎重な国もあり、鐘の音は港の暮らしそのものだとして変更に反対しています。
このため会議は、各国の合図は残したまま、窓が閉まる直前にすべてのターミナルが同じ光を灯す共通の予告だけを先に決める案を検討しているとしています。
会議の担当者はこう話しています。
「慣れた合図を変えたくないという声は強いです。ただ、手を振りそこねた悔しさは、どの国でも同じでした」
乗り継ぎの途中で娘を見送った父親は、こう話していました。
「鐘が鳴ると思って待っていたら、足元がふっと明るくなって。気づいたときには、もう小さくなっていました」



