この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。

建物や乗り物ごとに香りを設計する仕事として、「香り調整士」という資格がこの春、新しく設けられました。

香り基準協会によりますと、資格を持つ人は全国でまだ12人にとどまり、養成講座の応募はおよそ90人と、担い手不足からの出発になっているということです。

対象となる施設は駅や商業施設を中心にすでに430か所にのぼり、依頼はこの1年でおよそ3倍に増えました。

香りを設計する仕事に、まだ教科書がありませんでした。

同じ建物でも季節や時間帯によって求められる香りが違うため、調整士は現場ごとに一から基準をつくっているのが実情です。

建物の外皮が温度と湿度を決めている以上、香りの立ち方も建物ごとに変わります。

来年から季節の区分が5つになると、切り替えの回数はさらに増える見込みです。

「そちらは何季ですか」と訪問前に尋ねる習慣は定着しましたが、香りについて同じことを尋ねる言い方は、まだありません。

好みを機械に決めさせない理由について、協会は、香りが本人の記憶と結びついているためだと説明しています。

多数の平均を取ると、誰の記憶にも当たらない香りができあがるといいます。

一方で、体質に合わない人がいることを理由に、無香を基準とすべきだという意見もあります。

協会の担当者は、こう話しています。

「音や光の調整はすでに確立していますが、香りは好みの差が大きく、正解の決め方そのものを作っている段階です」

資格を取ったばかりの調整士は、こう話していました。

「苦情のほとんどは、香りが強すぎることより、急に変わったことへの戸惑いでした」