この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。

大きな音を伴う打ち上げ花火に代えて、音を出さない光の演出で夏を彩る「光の行事」が各地に広がっています。

生活の記録を常時とる環境機器が突然の大きな音に弱いことから、花火大会の開催地はこの10年でおよそ4割減り、光の行事は全国680件まで増えました。

1件あたりの観客はおよそ2300人で、花火が盛んだった頃の動員をすでに上回る会場もあるということです。

夜空を彩る音が、静かに消えていきました。

光の行事では、無数の小さな光を空中に描く演出が主流で、観客は音の代わりに光の動きに合わせて拍手を送ります。

音を出さない催しは、この十数年で夏だけのものではなくなりました。

音を出さずに聴かせる「音のない音楽会」は、いまでは深夜の番組欄に定着しています。

一方で、祭りの音や商店街の呼び声は保護音に指定されており、住民の合意なしに弱めることはできません。

消してよい音と、残す音を人が決めているという点では、光の行事も同じ流れの上にあります。

主催者の一人は、こう話しています。

「花火の音を懐かしむ声もありますが、光だけでも十分に歓声は上がります」

宵原三丁目の会場で初めて光の行事を見た小学生は、こう話していました。

「音がないのに、みんなが息をのむ瞬間があるのが不思議でした」