この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。

都内各所で、建物ごとに設定が異なる外皮が生む季節の差を利用し、洗濯物を隣家の物干し場へ持ち込む「またぎ干し」が広がっています。

生活季節調整センターによりますと、乾きやすい季節に入った建物の物干し場を、まだ湿った季節が続く隣家へ貸し出す形が多いということです。

道を挟んで片側は秋の乾いた風、もう片側はまだ残暑期の湿った空気という路地では、洗濯物が縦一列に並ぶ光景も珍しくありません。

きっかけは、ある商店主が「うちはもう乾くから、干していきなよ」と隣の住民に声をかけたことだったといいます。

物干し竿だけが、先に秋へ渡っていた。

センターにはこれまで、屋上の境界に生じる季節のずれをめぐる相談が寄せられてきましたが、路地の物干し場をめぐる相談も新たに増えているといいます。

確認されている路地は全国でおよそ140か所、季節の差は平均で22日にのぼるということです。

利用は住民どうしの口約束で始まることが多く、戻す時間の目安が決まっていないのが悩みの種だといいます。

「昼に干しに行ったら、隣の分がまだ竿を占めていて気まずい思いをしました」

アンケートでは、利用した住民のおよそ4割が、他人の物干し場を使うことに今でも抵抗があると答えています。

竿を借りたまま季節が入れ替わり、干した本人が取りに来ないまま忘れられる例も出ています。

センターは今月、順番の目安を路地の掲示板へ貼り出す試験を8か所で始めました。

季節相談員はこう話しています。

「共同衣装棚は品物を貸せますが、乾く時間そのものは貸せません。順番の目安づくりを進めています」