この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。
2020年代、送った文章が読まれたかどうかを示す「既読」という表示が、メッセージアプリで日常的に使われていました。
未来史研究所によりますと、残暑期の寄贈月間にまとめて届いた通信記録およそ3万8000件を分析した結果、利用者の64%が既読をつけた直後にすぐ返信しなくて済むよう、表示を確認しない設定を使っていたことが分かったということです。
読んだと伝えたくないのに、既読だけは消せませんでした。
既読をつけてから実際に返信するまでの時間は、平均でおよそ42分だったとみられています。
相手にどう思われるかを気にしながら文面を練っていたことが、残された下書きの数からうかがえるとしています。
この表示は、本人確認の方式が変わったのではなく、通信の仕組みそのものが変わったことでほぼ姿を消しました。
離れた相手の様子をその場で伝え合う「気配共有」という方式が2050年代にかけて広まり、読んだかどうかを後から確かめる必要自体がなくなったためです。
現在、既読という言葉の意味を説明できる人はおよそ0.1%にとどまっています。
未来史研究所は今月、寄贈月間に合わせた展示で、当時のやり取りを再現した画面を来場者へ見せました。
画面を見た来場者からは、読んだだけでなぜ相手に伝わるのかと戸惑う声が上がったといいます。
研究員はこう話しています。
「返信の文面より先に、既読をつけるかどうかで悩んでいた記録のほうが多く残っていました」
展示を訪れた来場者はこう話していました。
「既読をつけてから42分も返信を我慢していたなんて、当時の人はよほど暇だったのかと思いました」



