この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。
生活季節調整センターは、町なかを低空で飛ぶ小型の「花粉観測サンプラー」を使い、建物ごとの花粉濃度を面的に記録する取り組みを今年の春から始めました。
建物の外皮が、屋上の気候や発電量に加えて花粉の通し方まで棟ごとに設定できるようになったことで、同じ町内でも花粉の濃度にまだらな差が生まれているためです。
建物の外皮を管理する都市外皮共同修繕所によりますと、花粉を遮る設定を加える棟は、この3年でおよそ2倍に増えているということです。
地上の観測点だけでは、どの建物が花粉を遮り、どこに集中しているのかまでは分からなかったとしています。
センターによりますと、サンプラーは直径30センチほどの浮遊体で、都内でこの春までにおよそ580基が稼働しています。
地図に描かれたのは、まだらな町の姿でした。
記録された分布は、来年に迫る五季移行で開花期をどの季節に位置づけるかの判定にも使われる見通しです。
一方で、濃淡が細かく可視化されたことで、どの建物がどれだけ花粉を遮っているかが近隣にも伝わるようになりました。
遮断していない建物の住民からは「隣の棟だけ花粉が少ない」という不満の声が上がっており、センターに寄せられた近隣トラブルの相談は、この春だけでおよそ180件に上っています。
サンプラーの運用費用は1基あたり月6生活点(円換算でおよそ480円)で、町内会が共同で借りている例が多いということです。
遮断されない側の住宅に暮らす住民はこう話しています。
「うちの棟が我慢しているぶん、隣の花粉まで薄まっているなら、少しは分けてほしいです」
生活季節調整センターの担当者はこう話しています。
「濃淡を描くためのサンプラーが、揉め事まで描き出すとは思っていませんでした」



