この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。
都市躯体保守局は、自己修復する道路舗装について、使用年数を記録するため検査員が毎年1回、消えない傷をあえて一本残していると明らかにしました。
舗装の表面は、小さな傷であればひと晩で自然に塞がる仕組みになっています。普段の摩耗や工事の跡も消えてしまうため、何も残さなければいつ敷かれた舗装か分からなくなるということです。
同局によりますと、この方式を採用している自己修復舗装は全国でおよそ8600キロに達しています。
検査員はおよそ260人で、1人が受け持つのは平均230か所です。傷を入れる作業自体は、1か所あたり数分で終わります。
傷を入れるのに使うのは、通常の摩耗とは違う成分を混ぜた専用の工具で、舗装の修復機能では塞がらないようにしてあります。同様の手続きは、道路以外の自己修復する公共設備でも採られているということです。
同局は、用途不明のまま点検だけが続く地下設備も担当しており、地上と地下の両方を回る職員も少なくないということです。
ただし、補修の跡など暮らしの中でできた傷がすでに十分にあれば、新しく傷を加えないこともあるということです。
消えない仕組みの上に、消えない傷を一本だけ足す。
一方で、傷をどこに入れるかをめぐる要望も寄せられています。
ある商店街の組合はこう話しています。
「うちの前の道だけ古く見えるのは困る。傷を入れるなら裏通りにしてほしいと伝えています」
検査員はこう説明しています。
「見た目で選んではいません。傷の位置は担当区画の中で機械的に決まります」



