この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。

天文観測普及会は、十三夜にあたる今月24日の夜、月面の地球望遠区から声だけの中継を届けると発表しました。

十三夜は、先月26日の十五夜から1か月ほどあとに巡ってくる、満月の2日前の月です。

地球では昔から、十五夜だけを見て十三夜を見ないことを「片見月」と呼び、縁起がよくないとしてきました。

普及会によりますと、月の町にも、これに似た習わしがあります。

地球で月が満ちる晩、月の空から地球は消えます。

地球望遠区では、地球が見えない晩がひと月に3晩ほど続きます。

住民は、地球がまだ細く残る十三夜を「地球の見納め」と呼び、窓辺で見送ってきました。

今回の中継は、その窓辺の様子を住民が40分ほど語るものです。

受け取るのは、全国2400か所の屋上のラジオ会で、映像は付けません。聴く人は、月を見ながら月の声を聞きます。

一方で、昨年の試験では、聴き入るあまりラジオばかり見つめて、月を見上げない人が目立ちました。

普及会は今回、ラジオを人の背より低い台に置くよう案内していますが、効き目は読めていません。

普及会の担当者は、こう話しています。

「見納めと言っても、地球の人が月を見る行事ではありません。月の人が地球を見る話を、空の下で聞く行事です」

地球望遠区の住民は、こう話しています。

「十五夜の晩は、こちらから地球は見えません。でも、地球の屋上で誰かがこちらを見上げているのは分かります。見納めのあとは、見られているほうに回るだけです」