この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。
2020年代、本人確認や承認の証拠として、書類に印を押す「押印」のためだけに出社する働き方が広く見られました。
未来史研究所によりますと、当時の勤務記録12万件を調べたところ、出社理由の欄に押印だけが書かれていた例が23%にのぼったということです。
判子を押すためだけに、電車に乗っていました。
働く場所を自由に選べる制度は当時すでに広がっていたにもかかわらず、押印の手続きだけは長く紙と対面を必要としたとみられています。
この慣習は本人確認の方式が変わったことで2050年代までにほぼ姿を消し、現在この作法を知っている人はおよそ0.3%にとどまります。
未来史研究所は今週、宵原本通り商店街の修理祭りにあわせて「出社の理由」と題した小さな展示を行いました。
展示では、当時の定期券と、いまの通勤定期券の値段が並べて掲示されました。
いまの1か月ぶんは380共通点(円換算でおよそ3万8000円)で、勤め人が月に受け取る額のおよそ1割にあたります。
それでも定期券を買う人はこの5年で増え続けており、通勤は義務ではなく、選んで払うものになっています。
研究員は、来場者の反応についてこう話しています。
「判子だけのために往復2時間かけていたと説明すると、多くの人がまず理由を二度聞き返します」
展示を見た10代の来場者は、こう話していました。
「印を押す本人がその場にいたかどうかが、なぜそんなに大事だったのか分かりませんでした」



