この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。

都内のある地域会館で先月、住民の130歳の誕生日を祝う会が開かれました。

集まった近所の住民が驚いたのは年齢そのものより、こうした会がすでに地域の年中行事として定着していたことだったといいます。

自治会によりますと、100歳を超えた住民の誕生日を記念する会はこの数年で広がり、全国ではおよそ1800件開かれているということです。

こうした会が増えた背景には、「老いの節目」とされる年齢そのものが、100年前とは大きくずれてきたことがあります。

未来史研究所によりますと、2020年代の家庭行事の記録およそ9200件を分析した結果、60歳の誕生日を「還暦」として親族で祝った記録が確認されたのは、全体の74%に上ったということです。

当時は60歳が「老いの始まり」とされ、赤い頭巾や上着を贈って祝う習わしが広く見られたとしています。

「老い」が始まるとされる年齢は、暮らしの長さに合わせて、少しずつ後ろへずれてきたようです。

この習慣は平均寿命が延びるとともに形を薄め、2050年代までにほぼ見られなくなったとみられています。

現在、60歳を「老いの節目」として祝う考え方を持っている人は、およそ0.3%にとどまっています。

平均寿命が延びたことは、60歳の意味合いだけでなく、改名の届け出が80代以降に集中する背景にもなっているとされています。

一方で、「還暦」という節目が無くなったことで、「どこかで肩の荷を下ろせる区切り」が見えにくくなったと話す住民もいます。

地域会館で祝いの準備をした自治会役員はこう話しています。

「還暦という言葉は知っていても、60歳が老いの入り口だったという感覚は、もう誰にもありません」

130歳を迎えた本人は、会の最後にこう続けました。

「節目が後ろにずれただけで、前の人も今の人も、同じように歳を数えて祝っているだけだと思います」