この記事はフィクションです。ツギノテFICTIONが2126年の紙面という設定で書いており、登場する出来事・数値・団体はすべて架空のものです。
2020年代、商業施設の駐車場で、入口に近い区画の空きが出るまで車を止めずに待ち続ける行動が日常的に見られました。
未来史研究所によりますと、公共記憶アーカイブに預けられた当時の車の走行記録およそ3万1000件を分析した結果、入口に近い区画が埋まっているのを見て、空きが出るまで場内にとどまった例が47%に上ったということです。
待ち時間は平均でおよそ6分だったのに対し、遠い区画に停めて入口まで歩く余分な時間は90秒ほどだったとみられています。
待っている間に、遠い区画の人は店に着いていました。
当時は入口に近い場所を「よい区画」とする感覚が広く共有されており、遠い区画が空いているのを横目に、同じ通路を何周も回る車の記録も残っているとしています。
この行動は、人を降ろした車が自分で空きを探して停まる仕組みが広まったことで、2050年代までにほぼ姿を消しました。
現在この習慣を知っている人は、およそ0.8%にとどまっています。
未来史研究所は今月、旧商業施設を転用した屋内湿地の一角に、当時の駐車場の区画を床に描いて再現し、「空き待ち」を体験する展示を開いています。
遠い区画に空きがあると案内されていても、入口側の前で足を止めてしまう来場者が少なくないということです。
研究員はこう話しています。
「誰も教えていないのに、入口に近い区画の前で足が止まります。習慣が消えても、損をしたくない気持ちは残っていました」
展示を訪れた来場者はこう話していました。
「遠くへ行けばいいのは分かっていました。でも待っているあいだは、まだ負けていない気がしたんです」



